時代とともに変わるハッカーの定義 ― すでにクラッカーと区別できない時代なのか

ホワイトハット?なんだそれ セキュリティ
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Photo by Vidar Nordli-Mathisen

21世紀になってかなり経過し、ハッカーをクラッカーと区別できる時代はもう終焉を迎えたのかもしれません。

ハッカーとクラッカーの違い

Wikipediaを見るとハッカーは以下のように書いてあります。

ハッカー (hacker) とは主にコンピュータや電気回路一般について常人より深い技術的知識を持ち、その知識を利用して技術的な課題をクリアする人々のこと。また、コンピュータの「内側」を覗く人としても使用され、この内側を覗く行為が破壊行為あるいは不正アクセスを伴う場合は、ハッカーではなくクラッカーと言い換える事が提案されている。

Wikipedia ハッカー

個人的には「主にコンピュータや電気回路一般について」というところは「主に技術について」と読み替えるとしっくりきます。

対するクラッカーの定義はWikipediaにはこう書いてあります。

クラッカーは、コンピュータネットワークに不正に侵入したり、破壊・改ざんなどの悪意を持った行為、すなわちクラッキング(悪意を持ったハッキング)を行う者のこと。最近はセキュリティ・ハッカーと呼ばれることが多い。

Wikipedia クラッカー

Wikipediaにもあるように、その昔、「ハッカー(Hacker)」は明確に「クラッカー(Cracker)」と区別されていました。

正確に言えば、区別する人々が混同する人々より力を持っていました。趨勢で勝っていたのです。だから、うっかりクラッカーという意味でハッカーと言おうものなら、あちこちからツッコミが入ることで区別ができていました。彼らにとってハッカーの称号は名誉であり文化であったのです。

"hack"の語源
How To Become A Hacker: Japanese

ホワイトハット、ブラックハットという用語の台頭

しかし、今の時代にハッカーを善良な人々の意味で使うのはもう無理ではないかと私は思うようになってきました。ハッカーをクラッカーという意味で使う人やメディアが多くなりすぎたのです。

海外ではハッカーという用語はクラッカーと同義で使われるようですし、警察庁の認識もそのようです。

日本語全般でも、言葉は時代により変わると言われます。「確信犯」などがそうでしょう。

かくしん‐はん【確信犯】

  1. 道徳的、宗教的または政治的信念に基づき、本人が悪いことでないと確信してなされる犯罪。思想犯・政治犯・国事犯など。
  2. 《1から転じて》悪いことだとわかっていながら行われた犯罪や行為。また、その行為を行った人。

goo辞書 確信犯

「確信犯」について、原理主義的考えの人は、上記1を頑なに守って2の用法は誤りと言います。でも多くの人が2の用法が正しいと思ってしまっており、この流れは変えられそうにありません。「ハッカー」という言葉も同様の運命だと言えます。

Wikipedia テンガロンハットより

今その区別をするのは「ハット(Hat)」であり、「ホワイトハット」「ブラックハット」という用語を使って悪意の有無、違法遵法を区別するのが適切でしょう。

西部劇で悪役は黒いテンガロンハットをかぶり、そして正義の味方は白いテンガロンハットを被っている、その様子から「ホワイトハット」=「善人、正義の味方」、「ブラックハット」=「悪役、悪者」という役割の意味を持つようになったようです。

「ハット」とはツバのある帽子のことですが、概念として使われる場合は役割、職務を示し、そのハットを被ることを、職務を遂行する、役割を担当するという意味で使います。シックス・ハット法なんかがわかりやすい例になるかと思います。

https://swingroot.com/six-thinking-hats/

ホワイトハットはハッカーの代わりとなるか

ハッカーは冒頭の定義のとおり「常人より深い技術的知識を持ち、その知識を利用して技術的な課題をクリアする人々のこと」です。だから、モーターハッカー(自動車を魔改造してしまう超オタク)、フードハッカー(食品に関しては何でもできちゃうすごい人)のような用法も可能だったはずです。

もしかすると今でも通用する使い方かもしれませんが、とはいえ現代において、ハッカーという言葉にはネガティブな意味合いが含まれてしまっていることは否めず、「フードハッカー」だと「本来は食べられないようなものを素晴らしい美味な料理にしてしまう」とか「食べると超人になってしまう危険なドリンクを調合する」みたいな少し危険な方向の匂いがしてしまいます。

他方ハッカーに関連する言葉としては、「ハック」「ハッキング」「グル」「ウィザード」「ギーク」などがあります。

「ハック(Hack)」は、「ライフハック」とか「クイックハック」のように「工夫する」、「やっつける」という語感で、まだネガティブな意味合いを持っていないようです。

ところが、ハックとほぼ同義のはずの「ハッキング(Hacking)」は明確に「悪いこと」の意味を被せられ、「コンピュータに不正に侵入する」意味で使われてしまっています。

グル(Guru)」「ウィザード(Wizard)」はまさに冒頭のハッカーの意味そのものであり、加えて「達観」の意味すら持ち合わせます。日本語だと「達人」なのでしょうか。過去にハッカーと呼ばれていた人たちは、ハッカーの意味の変化に伴い、ハッカーと呼ばれるよりもグルと呼ばれる方を望んでいるようです。ただ、日本でこれらの用語は浸透しているとは言えず、ウィザードというと単に「魔法使い」という意味として取られてしまう可能性が高いでしょう。

ギーク(Geek)」は日本語だとオタクが近いでしょう。まさに冒頭のハッカーの定義と一致する感があります。ただ、グルやウィザードと比べると少し幼稚(あるいは若い)感じがあり、年配者に使うのははばかられる感じになります。

では「ホワイトハット」「ブラックハット」はどうでしょうか。「ホワイトハット」は「ブラックハット」と対語となっていることから、明確に善良な意思を表していますが、ハッカーが持つ「常人より深い技術的知識を持つ」という意味合いはありません。ブラックハットも同様です。

図にするとこのようになるかと思います。

2020年の言葉のイメージ

 

意味の変遷

前述の通り、日本語も時代を超えて言葉の表す意味/意図が変化してきています。ハッカーという言葉も変わることは仕方ないと最近は思っています。

私の若い頃(1990〜1995年頃)感じていた用語の語感は次の図のような感じでした。

1995年の言葉のイメージ

上の方の現代の用語の図と比べると違いが分かってもらえるかと思います。

ではどんな言葉を使うか

その当時のハッカーを表すにはどの様な用語が適切かと考えてみます。

ホワイトハット・ハッカー(あるいはホワイトハッカー)

あくまでハッカーの用語は使いつつ、「善良」の意味を追加する、この言葉が一番適切なのだと思いますが、まどろっこしいですね。

グル

私が好きな言葉ですが、知名度が今ひとつです。また自ら手を動かすといった意味合いが薄いかなとも思います。

ギーク

結局これがシンプルで一番近い気がします。知名度はさほど高くありませんが、それでも最近ではギークという言葉を見かけることも増えました。

おわりに

ハッカー関連でのハットという言葉には「ホワイト」「ブラック」以外に「グレー」「グリーン」「ブルー」「レッド」などがあるようです。それぞれ、「黒と白を使い分ける」「初心者」「報復/復讐」「政治」の意味があるようです。色々あるのですね。

「ハッカー」を帽子の色で6種類に分類 あなたは幾つ説明できる?
セキュリティ専門家ならブラックハット、ホワイトハット、グレーハットにはなじみがあるだろう。だがグリーンハット、ブルーハット、レッドハットにまで広がるとどうだろうか。新旧ハッカーを種類別に解説する。

図にするとこんな感じでしょうか。

2020年の言葉のイメージ

そのうち「イエロー」「ピンク」が出てくれば…。と思いましたが年齢がバレますね。止めておきます。

秘密戦隊ゴレンジャー - Wikipedia
こんな記事を書く当社ですが、社内にハッカーは…居ないかも。グルは…どうかなあ、といった具合です。ただ皆ギークやグル目指して日々鍛錬を重ねているようです。
こんな当社が気になる方、ぜひ連絡を。お待ちしております。